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フェロー・アカデミー
2023年インタビュー

Interview

会社員から翻訳家への道を歩み始める

訳し方や勉強法だけでなく好きな作品の話で盛り上がるなど、同じ翻訳を志す仲間と語り合うことが、かけがえのない経験だったと語る、竹歳辰彦さん

出版翻訳の世界では、準備段階としての訳を作る「下訳」や、出版の検討材料となるシノプシス(原書のレジュメ)をまとめる「リーディング」を経て、翻訳家として独り立ちすることが多い。フェロー・アカデミーの「出版翻訳コース」で学んだ竹歳辰彦さんは今、下訳やリーディングのチャンスをつかみ、一会社員から翻訳家デビューへの道を歩み始めようとしている。

「以前はIT・通信系の企業で、毎日英語を使っていました。ただ、英語の勉強を重ねるにつれ、日々の仕事のなかでもっと多様な語彙を用いたいと思うようになりました」

さまざまな翻訳学校の資料を検討し、フェロー・アカデミーの教材を見て、「自分に合っているのはこれだ」と確信したという。「とくに入門や初級レベルでは、教材を何度も反復して向き合うことになるので、やりこみがいのある教材かどうか、という点を重視しました」

翻訳学校で学ぶのは初めてだったこともあり、通信講座で「翻訳入門<ステップ18>」を受講した。「通信講座は自分のペースで進めることができる点がよかったです。オンラインスクーリングでは先生に直接質問することもできました」

著名な翻訳家に師事、紹介サポートでチャンスをつかむ

プロになるためには、積極性や自分で工夫して勉強する姿勢が大切と語る、加賀山卓朗先生

次に「出版翻訳コース」の初級クラスに当たる「出版基礎」をオンラインで受講した。以後、ハヤカワ・ミステリ『ミスティック・リバー』(デニス・ルヘイン著)など多数の訳書がある加賀山卓朗先生の指導を受けた。「非常に密度の濃い授業で、1回1回が真剣勝負でした。それ以来、先生の訳を体得するために、出版された先生の訳書とその原書を見比べながら勉強しつづけています」

講座では、受講生はあらかじめ課題を翻訳して提出し、授業前に講師の添削を受け取る。授業では当番2名の訳について検討し、議論を重ねることになる。「オンライン講座なので授業動画を後日視聴して復習できました。先生の解説や議論の内容を毎回きちんと理解した上で次に進めたのでとてもよかったです」

加賀山先生は、「竹歳さんは非常に勉強熱心です。翻訳は一人ひとりに個性があり、多様性があって当然ですが、やはりプロになるためには、積極性や自分で工夫して勉強する姿勢が大切だと思います」と言う。

受講生には10代の学生もいれば、定年退職をして翻訳の道にチャレンジしている人もいる。オンライン講座とあって、地方在住者も少なくない。竹歳さんの提案で、年代やバックグラウンドが異なる受講生同士、オンラインで勉強会を開催していたそうだ。

「訳し方や勉強法について真剣に話すこともあれば、好きな作品の話で盛り上がることもありました。そうやって同じ翻訳を志す仲間と語り合うことはかけがえのない経験でした」

フェロー・アカデミーには「アメリア」という翻訳者ネットワークがあり、出版社や翻訳会社からの求人情報を得ることができる。また、出版翻訳コースの中・上級講座受講生に向けた仕事のサポートとして「受講生×出版社 紹介サポート」を行っている。希望者が、出版社から指定された作品のリーディングに取り組み、講師の審査に合格したシノプシスを作成した受講生を、事務局が出版社の編集者に紹介してくれる仕組みだ。このサポートをきっかけに、竹歳さんはリーディングの仕事を受注することができた。

選考に関わった加賀山先生は、こう語る。「シノプシスは、原書の内容を削りながら筋の通ったものに仕上げなければいけないので、それなりのテクニックが必要です。講師による審査で、その基準はクリアしていることになりますが、その後どれだけがんばって仕事に結びつけることができるかどうかは、本人次第です」

出版翻訳の仕事は、紹介によってもたらされることも多い。フェロー・アカデミーでさまざまな講座を受講してきた竹歳さんは、加賀山先生からの紹介でノンフィクションの下訳にたずさわった。「授業では、『こんな訳し方もあるのでは』とあれこれ冒険していますが、仕事となると、より堅実な訳を心がけています。今はまず、自分の訳書を1冊出すことが目標です」

加賀山先生も、会社員からフェロー・アカデミーの講座を経て翻訳家としてデビューした。在校中は、ミステリ翻訳の世界で多大な実績を持つ田口俊樹先生に学んでいたそうだ。「私も田口先生の翻訳を手伝わせてもらったことがあります。人と人とのつながりは、今でもこの世界では非常に大切ですね」

仕事を続けながら学ぶことは決して楽ではないが、「まず、翻訳が好きだということが大事です。好きなことなら、寝る時間を削ってでもやってしまう。収入はなかなか安定しませんが、おもしろい仕事であることはまちがいないので、興味があるかたはぜひチャレンジしてみてください」

自分の名前が載った訳書を出すことは、決して夢物語ではない。フェロー・アカデミーの説明会や学習カウンセリングへの参加は、夢を実現させるための第一歩になるだろう。

※本インタビューは2023年時点の内容です。

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