Interview
華やかな世界の裏側にいた通訳者の本当の姿
瀧澤さんは官公庁・民間企業の会議や記者会見まで、幅広い分野で活躍をしている。
そんな瀧澤さんにとって、通訳とはどういう職業なのか。「人が話す内容を、正確に自分の言葉で再現し相手にわかりやすく伝えるようにすることが、通訳の仕事だと思っています」
通訳は一見、華やかなイメージを持たれがちだが、瀧澤さんの日々の業務は準備があってこそだという。「案件の準備として、その業界の専門単語を書き出し、関連のトピックを徹底的にリサーチするようにしています。資料がない場合でも同様にできる限りの下調べをして臨むようにします」
そこまで調べる理由として「その話がどこへ向かうか、予測・期待しながら聞いて通訳することが、より分かりやすい通訳になるからです」とリアルな実感を明かす。
「通訳者だけ話の文脈が見えていないと、浮いた訳となってしまいます。通訳に語学力は必須ですが、背景知識も重要です」
「知的な英語」に憧れてインタースクールへ
瀧澤さんは英語との出会いをこう振り返る。「大学時代に英会話を始め、世界中の人と話ができることに感動を覚えたことが原体験です」大学卒業後も何となく世界との接点を求めているうち、次第に「英語を仕事にしたい」と感じるようになった。
通訳学校に通おうと決意した瀧澤さんは、ある雑誌のインタースクールのインタビューで語られていた「『知的な英語』を身につけなければ国際社会で太刀打ち出来ない」という言葉に魅かれて、同校で学習を始めた。ただ、入学当初は明確に通訳者になりたいとは思っておらず、「話すことが好き」「英語を究めたい」という想いが強かったそうだ。
当時の瀧澤さんは、通訳者とは自然な日本語と外国語を自由に話す人がなる職業で、通訳とは言葉の変換作業だと思っていたという。しかし、ある通訳者を見て、イメージがガラリと変わったそうだ。
「地道な準備をして全力で伝えようとする通訳者の姿を初めて見た時、通訳者という仕事に強く共感し、大きな魅力を感じました」
この日が転機になって、通訳者を目指して勉強するようになった。「人生であれほど本気になって、楽しかった時期はなかったかもしれません。出来るようになりたい一心と、チャレンジできることに興奮を覚えながら、ずっと練習をしていたことを昨日のことのように思い出します」
その後も努力を重ね、遂にプロの通訳者としてデビュー。現在は大舞台で活躍しているが、本人は「知的な英語」を追求する道半ばという。まとまった時間はなかなか取れないが、感覚を鈍らせないため日々の努力は欠かせない。 「速い英語へのスピード感を鈍らせないように、CNNを見たりポッドキャストを聞いたりしています。世界情勢も常に頭に入れておきたいので、英字新聞や雑誌にも目を通しています」
スクール生時代から努力を欠かさず、より良い通訳を追求してきた瀧澤さん。通訳者として何よりも嬉しいのはお客様から「今日の通訳は分かりやすくてよかった」という喜びの言葉だという。
終わりなき通訳者としての道のり
瀧澤さんは、通訳者には「相手がどんな気持ちで何を伝えようとしているのか」、「これでわかりやすく伝わるだろうか」と考え抜き続ける姿勢が大切だという。
「通訳が出来ることと外国語が話せることには雲泥の差があると、初めてスクールで感じてから数年経ちましたが、今も歯がゆい思いをする毎日です。また、分かりやすく通訳するために知識をつける努力、準備を怠らない姿勢が常に問われるのがこの仕事だと思います。だからこそ、言語が違えど意思疎通が図れているのを目にした時に、感動とやりがいを感じるのだと思います。通訳者としての知識や感性を養う道のりにも終わりはありませんが、楽しいの一言に尽きます。皆さんもプロに挑戦してみませんか?」