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サイマル・アカデミー
2023年インタビュー

Interview

通訳者として現場に出るためのスキルを磨く

通訳者は、人のメッセージを伝える仕事なのだということを忘れてはいけないと語る、井戸惠美子先生

「社内で自己流に通訳をしているけれど、正確なスキルを自分のものにしたい」「いつかプロの通訳者として仕事をしてみたい」。こんな思いを抱く人たちが、実践的な知識とスキルを身に付けるために集まってくるのが、サイマル・アカデミーだ。

「ただ英語力が高いというだけで、通訳の仕事ができるわけではありません。サイマルの授業では、通訳者の仕事に必要な技術をレベルごとに体系的に学び、現場でプロとして仕事ができるようになるまで実力を高めていきます」と、通訳者養成コースの井戸惠美子先生は言う。

受講前のレベルチェックにて一定以上の英語力を備えた人は、「通訳者養成コース」で実践的な通訳技術を学ぶことができる。このコース開始時の目安は、TOEICテスト900点程度。英語レベルの高い人たちが通訳スキルを身につけ、さらなるキャリアアップを目指し受講している。

授業ではオリジナルの教材や生スピーチ素材を使い、井戸先生のように日々現場に出ている通訳者から直接指導を受ける。「話者の意図を正確にくみ取り、適切な表現を使って伝えることが大切です。社会人経験の長い方、知識のある方は自分なりの解釈を加えてしまいがちなのですが、私たち通訳者は、人のメッセージを伝える仕事なのだということを忘れてはいけません」

受講中からイベント通訳などで経験を積む

通訳者養成コースは7段階に分かれていて、「通訳準備」では通訳訓練に必要な英語力の養成および日本語表現力の強化にフォーカスしながら逐次通訳の初歩を学ぶ。進級後の「通訳Ⅰ~Ⅳ」では「逐次通訳」スキルの習得そして完成を目指し、通訳Ⅳ修了時にはフリーランスの通訳者として活躍できるレベルに到達する。話をいったん区切って通訳を挟む逐次通訳は、社内会議や商談、研修などで幅広く使われる手法で、高い正確性が求められる。最上位レベルの「会議通訳Ⅰ・Ⅱ」では、話し手の発言を聞くのと同時に訳していく「同時通訳」の練習に入る。国際会議の多くはこのやり方で、「会議通訳」と呼ばれることもある。このスキルに熟練するには、確かな逐次通訳スキルの上に同時通訳に特化した訓練が必要だ。

「授業以外にも、家で予習・復習をこなす必要があります。受講生の方々の多くは社会人で、時間のやりくりに苦労することもあるようです。私も元々会社員をしながら通訳の勉強を始めたので、『私はこんなふうに勉強時間を取りました』とお話しすることもあります」と井戸先生は語る。授業はオンラインでも実施されているため、日本だけでなく海外からの受講生もいる。様々なバックグラウンドの人たちが「Zoom」を通して互いの通訳を聞き、授業の中で刺激し合い切磋琢磨している。 開講は4月と10月で、1期につき2回、講師との個別面談の機会がある。自身のスキルの細やかなフィードバックだけでなく、通訳の仕事に就くにはどうすればいいかといったことも相談できる。

サイマル・アカデミーでは、在学中から人材派遣会社サイマル・ビジネスコミュニケーションズに登録し、社内通訳などの仕事を経験することができる。在籍レベルに応じてサイマル・インターナショナルにも登録し、単発にイベント通訳などを経験することも可能だ。「通訳の仕事は、実際に現場に出てみることが非常に大切。勉強中に経験した仕事でも、将来自分の実績としてアピールすることができます」

「通訳Ⅳ」および「会議通訳Ⅱ」を修了すると、サイマル・インターナショナルに通訳者として登録が可能だ。現在、対面式の国際会議が盛んに開催されるようになる一方、オンライン形式の会議も頻繁に続いており、通訳者の需要は高まる一方だという。井戸先生のような人気の通訳者は、1年先までアポイントが入っていることもある。

「機械ではなく私たち人間が訳すのですから、誠意を持って仕事をし、お客様に満足していただくことが大事です。話し手の意図を汲み取ること、伝えたいことは何かということを常に心に留めておく。通訳の能力だけでなく、人となり、心構えなども大切にしてください。それがよい通訳者として長く仕事を続けていくための秘訣です」

プロの翻訳者を育てるための「翻訳者養成コース」も同様に、現役の翻訳者を講師としてオンラインで実施しており、「産業翻訳コース(日英、英日)」「出版翻訳コース(英日)」がある。また通訳訓練法を用いて高度な英語力を養成する「英語強化コース」も好評だ。通訳・翻訳の各スキルについて、配信される動画を視聴する「インターネット講座」や、夏期・春期には短期集中プログラムもある。まずは英語のレベルチェックを受けて、念願のプロ通訳者への第一歩を踏み出そう。