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サン・フレア アカデミー

分野・レベルごとに開講される実務に即した豊富な講座ラインナップ

国内最大級の翻訳会社、サン・フレアが運営する翻訳学校。さまざまな分野で活躍する現役翻訳者が講師を務め、現場で得た翻訳技術やノウハウを盛り込みつつ指導を行う。創立以来、3000名以上の翻訳者を輩出している。

授業リポート

誤訳しやすい文法や単語を丁寧に解説

サン・フレア・アカデミーは多様な業種・業態で活躍する翻訳者を育成すべく、分野別に講座を用意。各分野とも、初級・中級・上級など自身のレベルに合わせて受講できる。

また、ライフスタイルに応じて講座を選べるよう、「通学科」と「通信科」の2コースを設けているが、「通学科」は現在、新型コロナウイルス感染症対策として、Zoomを利用したオンラインで授業を行っている。今回はその中から、「初級講座 はじめての技術翻訳B」のオンライン授業を取材した。

同講座は医薬・化学・バイオテクノロジー分野の基本的な表現や、この分野ならではの翻訳テクニックの習得を目指すもの。全8回で構成され、受講生は「消化器系」「化学式とアボガドロ数」など毎回異なる分野の課題に取り組む。今回は8回目の最終講座で、「ガスクロマトグラフ・質量分析計」の分野を扱い、「海洋生物や海底の堆積物に含まれる農薬の量を分析し、環境汚染について調査した文書」を和訳することが課題となっていた。

授業は1クラス最大6人までの少人数制で、テキストに加え、あらかじめ受講生が取り組んだ課題を講師が添削し、誤訳の多かった部分などを元に作成した資料を使って進められる。しかし、今回はマンツーマンの授業だったため、資料ではなく、添削された受講生の答案を画面に映しながら授業が進められた。

「読者の視点に立って正確に訳すことが重要」山口正晴先生

講師の山口正晴先生は、大手総合化学会社に勤務後、予備校で英文法を指導。現在はサン・フレア・アカデミーの講師を務めつつ、フリーの翻訳者として活躍する。山口先生は、「翻訳を行う際は、文法を正しく捉えて英文を理解することが重要。授業では受講生の文法的な間違いをできるだけ多く取り上げ、正確に理解できるよう指導しています」と語る。その言葉通り、授業では受講生が誤訳した部分を中心に、一文一文、丁寧に解説していく。

また、技術翻訳では、「英文に“だまされる”部分が多い」と山口先生。特に技術翻訳では、関係代名詞を使った文や分詞構文が複雑で、だまされやすいという。

今回の授業でも、分詞構文や関係代名詞「in which」を使った文を、受講生が正しく捉え切れていない部分があった。そこで山口先生は、「He entered this university, graduating four years later at the top of the class.(彼はこの大学に入り、4年後首席で卒業した)」と、分詞構文を使った平易な文を例に挙げるなどして、文の構造と翻訳のポイントを解説。受講生は自身の訳文がどう誤っていたか、自ら気づく場面もあった。

このように文法をきめ細かく指導すると同時に、山口先生は常に読者の視点をもつことの重要性を説いていく。「自分が英文を理解することと、理解したことを日本語で読者に伝えることは別ものです。和文英訳の場合、翻訳者は英文と訳文の両方を見ていますが、読者は日本語の訳文しか読めません。この事実が抜け落ちないよう、常に日本語の訳文しか見られない読者の視点に立ち、しっかり見直しをしてください」と指導した。

また、日本語に対する繊細さを大切にし、原文に忠実でありながら、自然な日本語を用いることも重要と説明。さらに、「use=使用/utilize=利用」「describe=記載する/list=収載する・列挙する」など、似たような意味をもつ英単語を適格に訳し分ける言葉選びのポイントについても解説していった。

受講生の質問や悩みに、真摯に向き合う

受講生は課題に取り組む際、訳文に加え、先生への質問も記載して提出する。授業では、先生がその質問に答えるほか、受講生が抱いた疑問をその場で先生に問いかけるなど、対面授業と同じやりとりが行われる。

例えば、「英文の内容が違うと感じたときはどうすればいいか」という受講生の質問に対し、山口先生は「訳者コメント」として、「英文が違っていると思われますが、原文通りに訳しました」あるいは「英文が違っていると思われるので、このように変更して訳しました」と記し、クライアントの判断材料を整理しておくようアドバイスした。

英文法などの基礎から各分野の実務に近い翻訳までレベル別に学べる

さらに、「知識のある分野の課題は、複雑な構文であっても誤訳が少ないが、知識のない分野は誤訳が増える」という悩みに対しては現場での体験を踏まえ、「特許も論文も、技術翻訳では最先端の研究内容が書かれている英文が多く、内容に対する知識がない場合がほとんど。時間の制約もあり、十分な調査を行えないまま翻訳作業に追われることも多いので、とにかく原文に忠実に、主語と動詞をしっかり押さえ、英文に即した読み方を心がけることが大切です」と指導するなど、翻訳技術だけでなく、実務に役立つテクニックが盛り込まれた授業だった。

こうした「通学科」の講座は4月、7月、10月、1月の年4回開講され、各講座の学習期間は3〜6か月。授業は週1回、2時間〜3時間行われる。また、オンライン授業は新型コロナウイルス収束後も継続される予定なので、通学が困難な人も受講可能だ。さらに、5月、9月、1月の年3回実施する翻訳実務検定TQEで優秀な成績を収めると、母体の翻訳会社サン・フレアに翻訳者として登録できる。

山口先生は翻訳者を目指す人々に向けて、「機械翻訳が話題となっている現在でも、まだまだ人間が翻訳をする必要性がある」とメッセージを送る。「私はバイオテクノロジーの分野の特許翻訳が専門ですが、一文が5行10行と長く続くような文書の翻訳は、機械翻訳では難しい部分がたくさんあります。翻訳会社に登録するなど依頼を受ける足場をつくってしまえば、コロナ禍のようなご時世でも、自宅で仕事ができます。絶えず緊張感に強いられ、体力が必要な仕事である一方、私は英語を訳すことが好きで、翻訳の仕事をしている時間が一番充実しています。英語が好きな人にとって、翻訳は一生続けられる仕事だと思っています」

受講者の声

一人で勉強していてはわからなかった気づきがあります

今後、大学で英語論文を読む能力が必要になるため、サン・フレア・アカデミーに通っていた知り合いから「初級講座 はじめての技術翻訳B」を勧められました。毎週通学することは難しいと思っていましたが、オンライン授業を行っていたため受講を決めました。オンライン授業は先生が解説してくださったことに対して、その場ですぐ質問できるなど、通常の「通学科」とほぼ変わらない授業を受けられると感じています。

講座を受け始めたばかりの頃は「翻訳って何?」という状態で、「英文は意味さえ取れれば、何とかなる」と思っていました。そのため誤訳も多く、一つの課題に長い時間を要していましたが、授業を通して、翻訳では読み手を想定して訳すことを理解し、自分でも複数の辞書を使うなど学習方法を工夫するうち、少しずつ誤訳が減っていきました。また、授業では、「間違いではないけれど、翻訳の場合は、こう訳したほうが読者に伝わる」など、自分一人で英語を勉強しているだけでは知りえない、「なるほど」と思うことをたくさん学ぶことができました。

今後は大学で、英語論文を読んだり、論文を読んで誰かに説明したりする機会があるので、講座で学んだことを、今後の研究などにつなげていきたいと思います。

School Data

所在地

〒160-0004 東京都新宿区四谷4-7 新宿ヒロセビル2階

問い合わせ先

電話:03-6675-3965(10:00〜18:00/日・祝 休校)

コース

通学科、通信科

開講時間

平日:10:00 〜 21:20
土曜:10:00 〜 18:30

通信・オンラインの有無

あり

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