【連載コラム 第35回】辛酸なめ子の英語寄り道、回り道
レディー・ガガの光と闇の戦いからの、愛に包まれる公演

約4年ぶりに来日公演「Lady Gaga: The MAYHEM Ball」を行ったレディー・ガガ。大阪と東京の計6公演は全席完売するほど大人気です。オリジナルアルバム『MAYHEM』をリリースし、音楽界に復活したレディー・ガガは、伝説を更新し続ける存在です。

これまでほとんどの来日公演(サマソニを含め)を観てきたので、今回もぜひお姿を拝みたいと思ったのですが抽選に落ち、マスターカード会員限定の先着販売があると聞いて申し込んだら、なぜかみずほ銀行キャッシュカードのマスターカードでは申し込みができませんでした。諦めかけましたが、全ての席が売られた後に出る「見切れ席」のチケットをなんとか入手できて、友人と一緒に行けることになりました。見切れ席はステージの真横でモニターや全体の演出は見えづらいですが、ステージの前方や花道は見えて距離も近いです。昔、テイラー・スウィフトのコンサートでもチケットの抽選に落ちて見切れ席を買ったことを思い出しました。これからも人気のアーティストの公演では見切れ席狙いでいきたいです。
公演は、アルバム「MAYHEM」について語るモノローグ映像から始まりました。それこそモニターが見切れで見えなかったので、後日公演に行った人のブログなどで内容を確認。
「The chaos in your heart will never cease, until you find another way to harness what you seek」
「あなたが求めているものを利用する別の方法を見つけるまで、あなたの心の混乱は決して止まらないでしょう」といった意味深なメッセージが投げかけられていたようです。
公演は、美しい混沌とも言える世界観でした。ステージには万博のイタリアパビリオンで見たような古代遺跡風の壮麗な柱が並んでいます。赤い照明に照らされて、赤い幕で覆われたオブジェから登場するレティー・ガガ。大声援の中「Bloody Mary」「Abracadabra」「Judas」と次々ヒットナンバーを披露。会場の熱気も最高潮に。
前半はほぼMCはなく、ヒアリングできたのは「Put your hands up!」「Get your hands up!」というガガ様の煽りのコール。時折なぜかFワードを交えた「Put your f***ing hands up!」というバージョンもありました。
「Poker Face」「Paparazzi」「LoveGame」「Alejandro」といった超有名な曲になるとテンションが上がります。4オクターブ以上というガガ様の声域は、かっこよかったりコケティッシュだったり声の高さによって違う魅力があり、表現力が無限です。何より声に宿るヒーリングパワーを体感しました。ちょうどこの頃、身内に不幸があり、落ち込み気味だったのですが、魂を少し癒してもらったようです。英語の歌詞が聞き取れなくても心で感じられました。口パクはしない主義のガガ様の生歌のエネルギーに圧倒されます。
見切れ席なので全貌は掴めなかったのですが、この公演ではレティー・ガガの演技力も発揮されていました。「Paparazzi」ではカメラに追われまくり憔悴するセレブの姿をリアルに演じ、息も絶え絶えになっていました。公演は5幕で構成されていて、歌だけでなくストーリーも展開している、現代版オペラのような壮大な世界観。レティー・ガガは1人2役を演じていて、内なるカオスを表現。ブロンドヘアのガガはライトサイド、幸せと愛に満ちたポジティブな状態で、黒髪のガガは不安、トラウマ、恐怖などダークサイドを表しているようです。サイトで考察している人によると、ダークサイドに支配されてライトサイドが殺され、ライトサイドが生き返ろうとしたけれどダークサイドに屈し、ライトサイドがダークサイドに憑依されたのち、ダークサイドの中にも愛があると気づいてお互いに共存。ライトとダークの両面があるのがレディー・ガガ、という流れのようでした。確かにレディー・ガガには陰謀論やダークな噂もありますが、それも自分の一部として受け入れることにしたのかもしれません。
テイラー・スウィフトの公演は3時間超えでずっと歌いっぱなし踊りっぱなしで心配になるほどですが、レディー・ガガは2時間半の公演中、箱の中に横たわって歌ったり、階段に腰かけて歌ったり、ダンサーがソロを披露する時間があったりと、ところどころ体力を温存する時間があるようで、少し安心できました。これからも長く活躍してほしいので、消耗しすぎないようにしてほしいです。
発信力があるセレブとして、社会に一石を投じるMCもありました。「I want to take a second to talk about something important to me. Importance of the world, especially in America right now.」「少し時間を取って、私にとって大切なことについて話させて。特に今のアメリカについて」と、話し出したレデイー・ガガ。「アメリカ全土でICEの容赦ない標的となっている人々、子供たち、家族のことを思うと、胸が痛みます。彼らの苦しみ、そして目の前で彼らの人生が破壊されていることを思います。また、ミネソタ州や故郷で、極度の恐怖の中で暮らし、私たちがどうすべきか答えを探している皆さんのことも考えています」と、アメリカ移民関税執行局(ICE)による厳しい取り締まりについて懸念を表明。
「希望を持つことが容易ではないと感じられるこの時、私を支えてくれるのは、私のコミュニティ、友人、そして家族です。ですから、今夜、少しでも希望を感じられる歌を歌い、私たちに少しでも希望を与えたいと思います」と、ピアノを弾きながら「Come To Mama」をエモーショナルに歌いました。このメッセージは世界で報じられていたので、そんな瞬間に立ち会えることができて感動しました。
光と闇の戦い、混沌がテーマの公演ですが、ガガ様自身は愛に溢れた方のようです。アンコールでは、楽屋でメイクを落とした姿が映し出され、そのままの姿でステージに登場。すっぴんの自然体で歌っていて好感度が爆上がりです。そういえば2022年のベルーナドーム公演でも、土砂降りの雨の中、衣装のまま外に飛び出して観客を見送ってくれる神対応がありました。今回のすっぴんアンコールは、全ての日程で行われた演出かもしれませんが、ドーム中の観客が心を掴まれました。世界最高レベルのアーティストのパフォーマンスに、英語や処世術などあらゆるものを学ばせてもらいました。


