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【連載コラム 第34回】辛酸なめ子の英語寄り道、回り道

ウガンダの少年との遠距離交流の思い出

 

世の中にあまり役に立てていないような気がして少し落ち込むことがありますが、そんなとき頭をよぎるのがスポンサードしている子どもの存在。20年弱、NGO団体のチャイルドスポンサーになっていて今はもう3人目です。月に数千円、発展途上国の子どもの教育費などを支援していて、世界のどこかに私を頼りにしている子がいると思うと励みになります。

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つい最近、10年ほど支援していた2人目のチャイルド、ウガンダのAくんが18歳になり登録終了となりました。次はインドネシアの少女の支援が始まります。Aくんの支援を始めた頃は彼は小学生で、サッカーをする少年を描いた絵を送ってきてくれたのを思い出します。大きな瞳の褐色の肌の少年で、写真を見ていると不思議と懐かしいような気がしました。

それから毎年のように、現地から写真と、健康や教育状況、ときどき本人のメッセージが届きました。たとえば10歳のとき「家族はみな変わりなくこの一年を過ごしました」「初等教育を受けています」「好きな科目は国語です」といった報告の中に「通学には約45分かかります」と書かれていたのが目を引きました。小学校まで歩いて45分ということでしょうか。好きな科目は国語とのこと。12歳のときは地理、13歳のときは数学と理科が好き、とまんべんなく色々な教科に興味を持っていて将来有望です。

写真を見ると、家の庭なのか赤土に裸足で立っていて、コンクリートに覆われた東京の住人からするとうらやましいです。健康状態に関しては、絶対に私よりは元気そうなのが伝わってきます。友達と一緒の写真も多いので、陽キャで皆に好かれているのかもしれません。私から送る写真は一人で写っているものばかり。仕事ばかりしている孤独な日本人と思われていそうです。

ウガンダの小学校では授業は英語で行われているようです。最初はたどたどしいイラストを送ってきていたのが、いつの間にか綺麗な字で英語の手紙が書けるようになりました。Aくんからの2024年の手紙にはこう書かれていました。

「I am glad to write to you, how are you?Thank you for the letter wrote to me, I am very happy. I am still studying hard, and my best subject is science and I am glowing health. I enjoy playing foot ball with my friends. In our country also is now over the corona virus pandemic and we are peaceful daily life. I wish you the best. Good bye.」

「元気ですか?お手紙をいただきありがとうございます。とても嬉しいです。今も勉強に励んでおり、得意科目は理科です。健康状態は良好です。友達とサッカーをするのが好きです。我が国でもコロナウイルスのパンデミックは終息し、平穏な日々を送っています。お元気でお過ごしください。さようなら」

淡々としていますが、礼儀正しくてティーンエイジャーの少年にしては立派です。コロナ禍の影響もほとんどないみたいで安堵。調べたら日本よりも感染者の割合が少なかったようです。大自然や肥沃な大地からエネルギーを吸収して生命力を高めているのでしょう。

順調に成長記録が届いていましたが、17歳になって気になる変化がありました。報告書の教育の欄に「経済的な理由で、学校には通っていません。このような場合、解決を促すために家族と接触を続けます」と書かれていたのです。16、17歳でもまだ初等教育というのも気になりましたが、経済的な理由で学校に通えていないとは。家の仕事を手伝っているのでしょうか。遠くからは、ただ「好きなことを見つけて挑戦してくださいね」とメッセージを送ることしかできません。また、今まで男性の友人と一緒の写真を送ってきていたのが、今回は女友達とのツーショットというのも気になります。男女交際で学業がおろそかになっていないと良いのですが……。

Aくんの学業の進捗について心配していたところで、18歳になり、スポンサーの任期が終了してしまいました。Aくんからの最後の手紙には「After completing my senior four I wish to join a technical school to do a course of driving and mechanics.」「高校4年生を終えた後は、専門学校に入学して運転と機械工学のコースを受講したいと思っています」とあって、方向性が見つかったみたいでよかったです。「NGO団体を通じて地域社会のために尽力していただいたことに感謝申し上げます」と、丁寧に書かれていました。私よりも英語の文章力が高いです。最後は「I wish you the best. Good bye」「幸運を祈っています。さようなら」と、しめくくられていました。別れの言葉が切ないですが、新しい未来に向かって進んでいこうという気概が感じられる手紙です。

それにしても流暢で洗練された英文に驚かされました。いつの間にかここまで英語ができるようになったとは。「drilling bore holes, medical care and scholarship materials. 」と、支援団体の活動について、難しい単語を使いこなしていました。今まで支援してきてよかったと胸が熱くなります。その教育の間、私も細々と英語を学んできましたが、Aくんの手書きの手紙を入力しただけでも4.5箇所スペルミスをしてしまい……。少年の成長の早さと自分の現状を比べて、別の意味で涙がにじみました。

辛酸なめ子 漫画家・コラムニスト。1974年東京都生まれ、埼玉県育ち。精神世界、開運から皇室、アイドル観察、海外セレブまで幅広いテーマを対象にエッセイと挿絵で人気を得る。著書に『辛酸なめ子の現代社会学』(幻冬舎文庫)、『スピリチュアル系のトリセツ』(平凡社)、『大人のコミュニケーション術 渡る世間は罠だらけ』『新・人間関係のルール』(光文社新書)、『女子校礼讃』『辛酸なめ子の独断!流行大全』(中公新書ラクレ)ほか多数。

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