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【連載コラム 第41回】辛酸なめ子の英語寄り道、回り道

ALパイロット直伝の英会話動画を観て募る憧れ

  JALの公式YouTubeサブチャンネルでの英会話講座がとても実用的だと話題になっています。憧れのJAL……。仕事の出張ではたまに乗れるチャンスがありますが、自腹の旅行だと高くてなかなかJALの航空券は買えません。友人との現地集合の旅行で私だけLCCということもありました。LCCの遠い乗り場にバスで移動し、タラップから乗ろうとしたら上空をJAL機が悠々と飛んでいくのが見えました。LCCの乗客のおばさま方が「ほら、あれが勝ち組のJALだよ。もう一生乗ることはないだろうね」と話しているのが聞こえてきて寂しくなりました。でも乗ったLCCでは「この便は日本航空との共同運航便です」というアナウンスが流れ、半分JALに乗ったということにしても良さそうでした。

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そんな最近のJALの思い出がよぎりつつ、「JALサブチャンネルはじめました。」の動画を見てみました。現役のパイロットやCAさんやスタッフが登場する注目のチャンネルです。

 話題になっている英会話の動画は「【朗報】英語ノー勉でもなんとか海外旅行を乗り切る方法を教えてもらいました」というもの。英語が苦手なディレクターが、パイロットの和田さんに旅行で使える英会話をレクチャーしてもらう、という内容です。パイロットの肩章が眩しい和田さんは、さわやかで癒し系のイケメンで、視聴者の人気が高いようです。背も高く、パイロットで英語もペラペラなんて、実生活では拝めない逸材。動画をきっかけにファンも増えて、コックピットから手を振ってもらったとか、アナウンスの声で和田さんだと気づいた、と、遭遇に喜ぶ声も。JALになかなか乗れない上に和田さんのフライトなんて確率がかなり低いですが、今回の動画をきっかけにチェックしたいです。

 動画のディレクターは海外ロケでも広報の女性頼みで「英語できないです」と明言。といっても謙遜なのでは? と思ったら、飛行機の機内食「なんとかオアなんとかって」と聞かれてどう答えていいかわからない、とか話していたので、「英語ができない」というのはガチのようでした。自分より英語が話せない人を見ると安心して共感が高まりますが、一方で日本の英語教育の限界も実感させられます。

 講師役の和田パイロットは帰国子女でサンフランシスコで暮らしていたので英語はペラペラ。最低限の英語で海外旅行を乗り切る方法をレクチャーしてくれます。

 海外旅行に行って帰ってくるまでの流れを想定し、各場面で必要な英会話を提示していきます。例えば機内食の「○○ or ○○?」の選択肢が聞き取れなかった場合。「どちらでもいいです」と答えたいときは「Whichever is fine.」がいいと和田パイロット。広報の女性は「Whichever is fine.と言ってくださるお客様は神様ですね。搭載数には限りがありますので。客室乗務員には好かれます」とコメントしていました。質問が早くて聞き取れなかったときは「Can you say that again slowly, please?」という和田パイロットのネイティブ英語が早くて聞き取れません。

 「無理ですね。覚えられない」とディレクターが言ったため「Slowly please.」の2語でもOKということに。

 入国審査時では「Occupation」(職業)「Purpose」(目的)「Visit」(訪問)という単語は聞き取ってほしい、と和田パイロット。「What is the purpose of your visit?」と聞かれたら「Sightseeing.」と答えるのが定番ですが、ディレクターはカメラを回すのが仕事なので「Filming」と答えるのが良いとのこと。さらに説明を求められたら「Filming is my job.」という答えがおすすめだそうです。滞在日程を聞かれたら、泊まる日数を言う、というのは知らなかったです。2泊の場合「Two nights」と答えることに。

 続いてタクシー移動。「ここで降りたいです」は「Please drop me off here.」ですが「もっと短くできますか」とディレクターがリクエスト。「Drop off here.」でも良いそうです。海外でつい「Get off」を使いがちですが「Drop off」のほうがこなれています。

 レストランに到着。「これは非常に難しいです」と、和田パイロット。まずは予約があるか聞かれます。「Reservationって聞いたことがありますか?」「ギリギリ」と、ディレクター。予約していない場合「No.」と答えて席へ。アメリカなどではテーブル担当の人がつくので、その人の名前を覚えて名前で呼びかけるのが丁寧だそうです。日本のように手を挙げて「すみませ〜ん」と叫ぶのはスマートではないとか。名前は最初聞き取れになかったら名札をチェック。オーダーするとき、「Whichever is fine.」と言うわけにはいきません。でも翻訳アプリを使ってメニュー内容を解読し、オーダーのときは指差して「This one.」「This one.」と言えば大丈夫です。

 食べてる途中、ウェイターさんがやってきて「Is everything ok?」と聞いてきたら、どう答えれば良いのでしょう。ディレクターはこの質問について「楽しいですか?」と聞かれている、と推測したら、和田パイロットのツボに入ったようでした。実際は「大丈夫ですか?」「料理楽しんでますか?」「追加オーダないですか?」といった意味合いだそうで、「Yes, the food and the service are great.」とホメると良いとのこと。「いいお客さんだなと思われます」と、和田パイロット。「僕、絶対これ覚えられないんで」と、ディレクターが言うと「Yes, great!」と短縮した会話案が出ました。ここで「Great.」とホメたので、チップもしっかり払う必要があるようです。お会計は「Bill please.」です。

 ここでふときづきました。海外でレストランに行ってここまでウェイターに丁寧に接客されたことがなく、会話もそこまで必要なかったということに……。和田パイロットはじめJALの方々が行っているレストランのランクが高かったようです。やはりJALは手が届きそうで届かない存在だと実感しました。いつか、レストランでの英会話例を活用できて、JALにも乗れる日を夢見ています。

辛酸なめ子 漫画家・コラムニスト。1974年東京都生まれ、埼玉県育ち。精神世界、開運から皇室、アイドル観察、海外セレブまで幅広いテーマを対象にエッセイと挿絵で人気を得る。著書に『辛酸なめ子の現代社会学』(幻冬舎文庫)、『スピリチュアル系のトリセツ』(平凡社)、『大人のコミュニケーション術 渡る世間は罠だらけ』『新・人間関係のルール』(光文社新書)、『女子校礼讃』『辛酸なめ子の独断!流行大全』(中公新書ラクレ)ほか多数。

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