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「第一線で輝き続けるために」
通訳者・橋本美穂さんロングインタビュー

多数の企業から絶大な信頼を得ているビジネス通訳者であると同時に、講演、書籍の執筆、テレビやラジオへの出演と多彩な分野で活躍している橋本美穂さん。通訳者として大事にしていること、第一線で輝き続けるために必要なことなどを伺いました。

第1回「常に120%のパフォーマンスを発揮するのが、プロの仕事です」

Profile:1975年米テキサス州ヒューストン生まれ。幼少期を日本で過ごした後、6歳から11歳まで再びアメリカへ。中高は神戸の公立学校に通い、慶應義塾大学総合政策学部を卒業。キヤノン(株)勤務、日本コカ・コーラ(株)の社内通訳を経てフリーランスに。著書に『英語にないなら作っちゃえ! これで伝わる。直訳できない日本語』(朝日出版社)。

Q:テレビやラジオ、雑誌への出演で、通訳者・橋本美穂さんの活躍は、広く知られるようになっていますね。

橋本美穂さん(以下「橋本」):ふなっしーやピコ太郎さんの日本外国特派員協会での記者会見通訳を務めたことから、私の仕事ぶりについて、2017年にTBSテレビ系のドキュメンタリー番組『情熱大陸』で取り上げていただきました。それからさまざまなメディアが声をかけてくださるようになり、2023年はトークイベント「 TEDxKeioU」でスピーチをしたり、雪印メグミルク社「恵 megumi ガセリ菌SP株ヨーグルト ドリンクタイプ」のCMに起用していただいたりと、本当に忙しい年になりました。

でも、私の本分は、通訳者としてビジネスの現場に出ることです。現在は、本業としての通訳の仕事に、これまで以上に集中して取り組もうとしているところです。

Q:通訳者として、普段はどのようなお仕事をしているのでしょうか。

橋本:私の主な仕事は、企業の人と人とをつなぐビジネス通訳です。会議に同席して会社の経営状況を通訳することもあれば、工場視察に同行して、最新鋭の機械についての説明を訳すこともあります。セミナーやカンファレンスで同時通訳を務めることもあり、オンライン会議に参加してパソコンの前で通訳をしていることもあります。

金融、IT、広告、マーケティングなどを得意分野としていますが、それ以外にも地方で農場の視察に同行したり、半導体製造工場説明を訳すなど、扱う内容は多岐にわたっています。

どの現場でも大切にしているのは、企業の方々の「この仕事を成功させたい」という思いをくみ取り、それを的確に相手に伝えること。ただ単に日本語を英語に、英語を日本語にするのではなく、話し手の声の調子やそのときどきの表情を読み取り、話をしている方の真意を伝えることができるように心掛けています。

Q:ビジネスに強いという点は、これまであまり注目されてこなかったかもしれません。

橋本:ふなっしーやピコ太郎さんの通訳経験から、エンターテイメントに強い通訳者と思われているところがあるのですが、私が最も得意としているのは、ビジネス通訳です。

慶應義塾大学の総合政策学部でアジア経済開発学を学び、経済の動きを注視していました。簿記の資格も取っています。卒業後はグローバルに展開する大手企業のキヤノンに就職し、世界各国の人が集まる会議にも出席していました。

通訳の仕事をするようになってからはIR(投資家や株主向けの企業の情報提供活動)の仕事が多く、企業の財務諸表などは興味を持って見るようにしています。企業の通訳の仕事ではmillion(100万)、billion(10億)といった単位の数字が日常的に使われ、こういった数字を扱うのも得意としています。

Q:キヤノン勤務を経て日本コカ・コーラ社の社内通訳、そして2007年からフリーランスの通訳者と、ビジネスと通訳の世界で、長い経験をお持ちです。

橋本:独立してから2024年で17年。これまで約6,000社の企業で通訳を務めてきました。お客様の中には、「橋本さんにお願いすれば大丈夫」と言ってくださる方もいます。その期待に応えられるよう、常に現場で120%のパフォーマンスを発揮するのがプロの仕事です。

フリーランスの通訳者は、通訳エージェンシーに派遣されたり、企業から直接依頼を受けたりして仕事をしています。社員というわけではなくても、現場に出ればビジネスのチームの一員。企業の方々には、仕事を成し遂げなければならないという切実な思いがあり、その思いを伝える通訳者にとって、現場は常に真剣勝負です。私の通訳技術を信頼して任せてくださる顧客の期待に応えるために、言葉を訳すだけでなく、感情も伝えること、そして仕事人として誠実であること。それが、通訳者として最も大切であると考えています。

(第2回に続く)

橋本さんの通訳者になるまでの道のりは こちら

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