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    越前先生の「この英語、訳せない!」

【連載コラム 第29回】
越前先生の「この英語、訳せない!」

ビシッと決まる訳語の裏には翻訳家の人知れぬ苦労があります。
名翻訳家の仕事と思考のプロセスを追体験できる、珠玉の翻訳エッセイ。

恥ずかしくない shyもある

「シャイ」と言えば、すでにじゅうぶん日本語になっているとおり、「内気な」「恥ずかしがりの」です。しかし、Longman Dictionary of Contemporary Englishを見ると、“nervous and embarrassed”という意味だけでなく、“used to say that someone does not like something and therefore tries to avoid it”という説明もあります。日本語で言えば、単に「きらい」や「気分が乗らない」程度ですね。
 
これは特に、何かの名詞のあとに-shyの形でついて使われる場合に顕著です。work-shyは「仕事ぎらい」、publicity-shyは「マスコミぎらい」であり、これらに「恥ずかしい」というニュアンスはほとんどありません。
 
shy ofの形になると、「~が不足している」や「~より前」という意味で使われる場合もよくあります。“He is two inches shy of six feet tall.”は「彼の身長は6フィートに2インチ足りない」であり、“They got divorced just shy of their fortieth wedding anniversary.”は「ふたりは40回目の結婚記念日の直前に離婚した」です。

 

越前敏弥(えちぜん としや) :文芸翻訳者。1961年、石川県金沢市生まれ。東京大学文学部国文科卒。訳書『オリジン』『ダ・ヴィンチ・コード』『Yの悲劇』(KADOKAWA)、など多数。著書に『この英語、訳せない!』『「英語が読める」の9割は誤読』(ジャパンタイムズ出版)、『日本人なら必ず誤訳する英文・決定版』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

 

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