【連載コラム 第2回】辛酸なめ子の英語寄り道、回り道
「That's hot.」は魔法のフレーズ
このところ、Y2Kブームですが、Y2K(2000年前後)を代表するセレブといえばパリス・ヒルトン。再ブームが来ている感じです。説明不要かもしれませんが、ヒルトンホテルの創設者コンラッド・ヒルトンの曽孫で、10代の頃から社交界で活躍。リアリティ番組「シンプル・ライフ」でブレイクし、日本でも有名になりました。パリス・ヒルトンが幼なじみのニコール・リッチーと、アメリカの片田舎に行って様々な課題に挑戦するシリーズです。
私も当時、パリスの醸し出す無敵感や、ゴージャスでポップなファッションセンスに心奪われ、パリスが出ている雑誌などを買い集めました。女性誌でインタビューする機会に恵まれて,約束をドタキャンされた時はパリスらしいと高揚感を覚えたほどです。そんなパリスブームの中、2005年に発行されたパリスのフォトブック「YOUR HEIRESS DIARY」(あなたの相続人ダイアリー)は、キュートな写真と格言が満載で、永久保存版として今も書棚に収められています。相続人のように誇り高く、品格を持って生きるパリスの姿に学ばされる一冊。どんな格言が収録されているのか、一部抜粋いたします。 (拙い訳で恐縮です)
Why wear black when you can wear pink?
ピンクを着られるのに、なぜ黒を着るの?
Look in the mirror once a day and say, ‘ I’m an heiress! And I’m worth a bundle!!’
1日1回鏡を見て、「私は相続人です! 私は札束に値します!」と言ってみて。
Why be a nobody when you can be a somebody?
あなたは誰かになれるのに、なぜ何者でもないままでいられるの?
There’s nothing worse than being boring.
退屈であることほど悪いことはないわ。
When people ask me what my worldview is, I say ‘pink.’
世界観は何?と聞かれたら、私は「ピンク」と答えます。
If people aren’t nice to you, they’re jealous.
誰かがあなたに親切でない場合、彼らは嫉妬しているの。
パリス・ヒルトンのポジティブシンキングが心にしみわたります。この本に掲載された以外でも「ウォルマートってなに?壁が売ってるの?」といった発言も有名です。当時天然のおバカキャラのイメージだったパリスですが、後にドキュメンタリー番組で「おバカキャラは演技だったの」と告白していました。
でも、パリスはいつも笑顔で明るいメッセージを発信しているように見えて、実際は試練が多い人生でした。26歳の時に酒気帯び運転で受けた保護観察処分に違反したことで禁固刑を言い渡され、刑務所へ。短期間でしたがお嬢様育ちのパリスにとっては辛い体験でした。
パリスのインタビューが掲載された当時の雑誌「COSMO girl!」(2007年8月号)も家にあったので改めて見てみました。
「Being in prison is by far the hardest thing I have ever done. I’m not same person I was.」
「刑務所に行ったことは、これまでの人生で最もハードでした。私はもうかつての私ではありません」
「 It was an act and that act is no longer cute. It’s not who I am.」
「私はバカなフリをしていましたが、それは演技でした。そんな演技はもうかわいくないです」
と、刑務所で得た気づきや人間的成長について語っています。それでも、黒と白のストライプの制服も、パリスはスタイリッシュに着こなしていました。
その後も犬のアパレルブランドを立ち上げたり、ミュージカルで美容整形手術中毒の娘を演じたり、コカイン所有の疑いで逮捕されたけれど自分のバッグではないと主張したり、紆余曲折ありましたが、パリスはDJとしての才能を発揮。「パリスとお料理」シリーズや、ドキュメンタリー「This Is Paris 」なども話題です。また、近年は、10代の頃に性的暴行を受けた話や、寄宿学校で虐待された話、ハーヴェイ・ワインスタインに追いかけられた話など、壮絶な過去を告白。
パリス・ヒルトンに生まれたら人生イージーモードだと思っていましたが、実際はかなりのハードモードだったとは。辛いことがあっても、一切そんな素振りは見せず、「That’s hot.」という口癖のキャッチーなフレーズを連発していたと思うとリスペクトがこみ上げます。「That’s hot.」は魔法のフレーズ。何があってもこのセリフを言えばポジティブに乗り越えられるのかもしれません。
今は実業家で恋人のカーター・リウムと結婚し、代理出産で息子、フェニックスが生まれ、おめでたいです。パリスは体外受精の治療を続けていて「男の子の胚は20人持ってる」などと、浮き世離れした発言も。常に時代の先端を行っているパリス・ヒルトン。年下ですがこれからもその背中を追い続けたいです。