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【連載コラム 第9回】辛酸なめ子の英語寄り道、回り道

スピリチュアルでミラクルな翻訳術

 日本の精神世界にとって重要な存在である翻訳家の山川紘矢さんと亜希子さんご夫妻。『アウト・オン・ア・リム』(シャーリー・マクレーン著)、『アルケミスト』(パウロ・コエーリョ著)、『聖なる予言』 (ジェームズ・レッドフィールド著)、『前世療法』(ブライアン・L・ワイス著)、など、多数の素晴らしい作品を翻訳され、大ヒットに導いています。

 翻訳のお仕事をされる前の経歴は、超絶エリートすぎて震えがくるほど。山川紘矢さんは東京大法学部を卒業し、司法試験に合格、大蔵省に入省し、外交官として活躍。国連や世界銀行でも働いていたそうです。山川紘矢さん以外の人がこの経歴を言ったら虚言症かと思うレベルの異次元のキャリアです。山川亜希子さんは東京大学経済学部卒業でマッキンゼー・アンド・カンパニーなどで勤務。憧れの会社です。これ以上のハイスペックの夫婦はなかなか日本に存在しないのではないでしょうか……。

 山川さん夫妻のすごいところは、キャリアを極めた後は、あっさり手放して、今度は霊性を高めるお仕事に転向されたということ。山川亜希子さんのインタビューを読むと、92年頃から気づきのセミナーに参加し、自己探求するようになり、山川紘矢さんがアメリカに転勤になって、そこでシャーリー・マクレーンの本と出会ったそうです。もともと俳優の自伝が好きだったので、興味を持って読んだところ、内容が良かったので日本の人にも読んでもらいたいと思い、お2人で半分ずつ翻訳。最初は趣味的に翻訳していたのが、「あなたたちは人々の意識を覚醒させるために働きなさい」と神様のお告げがあり、シャーリー・マクレーンの本を続編も何冊か翻訳したら次々ヒット。翻訳の世界でやっていくことに決めた、という流れです。

 『アウト・オン・ア・リム』は、シャーリー・マクレーンの不倫の話に始まり、宇宙人や輪廻、霊能者、神様など、精神世界の要素が満載の本で、スピリチュアル好きなら必読の名著です。

 前置きが長くなりましたが、先日、そのレジェンド的な翻訳者である山川夫妻にお目にかかって話を聞く機会に恵まれました。「引き寄せサミット」というオンラインイベントの関係で、庭付きの素敵なご自宅に訪問し、インタビュー。初対面のご夫妻はポジティブでオープンマインドなお方、という印象です。80代と言われても信じられないくらい生命力と肌力がみなぎっています。

 精神世界の本を訳されるようになったエピソードを改めて伺うと、「最初は精神世界なんてわからなくて。シャーリー・マクレーンの本を読んだ時も、精霊が出てきてびっくりして、嘘みたいな話だと思いましたね」と、山川紘矢さんはおっしゃいます。この本が出た80年代は日本では心霊やオカルトブームはありましたが、精霊やオーラ、チャクラなど波動高い系の精神世界はほとんど知られていなかった頃です。
「そうしたら、自分たちにも同じようなことが起こって。亜希子さんがサンジェルマン伯爵の精霊とチャネリングできるようになったんです」
 錬金術師や不老不死などの伝説があるサンジェルマン伯爵に選ばれた亜希子さん。世界的なカリスマ、サンジェルマン伯爵にプロデュースされた仕事だと思うと、安心感があります。
「サンジェルマン伯爵からいろいろ教わって成長して、それからアッシジの聖フランチェスコが出てきて、またいろいろ教わりました。3人目はイエス・キリストですね」

 中世イタリアの聖人、聖フランチェスコに、さらにジーザスまでバックアップしてくださっているとは。翻訳した本が大ヒットするのも納得です。ベストセラーの裏には、天界から仕掛ける聖なるプロデューサーの存在が。(自分にも誰か……という思いがよぎります)
「『聖なる予言』とかそういう本も、精霊たちが指導してくださっている。実際話を持ってくるのは出版社ですけど。でも、すごい地味な仕事ですからね。翻訳の仕事は」 と、山川紘矢さん。
「パソコンが導入される前は手書きで、辞書を引いて訳していましたから。今はパソコンで翻訳して直すっていうんだからラクだね。でも僕は今も自分で訳してるので大変です」

 山川亜希子さんは、もともと教養レベルが高いにしても、英語の読解力が高まったのは紘矢さんの外交官時代の海外赴任がきっかけだったそうです。
「私は外資系の会社で英語は使っていたけれど、翻訳なんて勉強したことなかったです。若い頃にマレーシアに行ったら、本が読みたくても英語のペーパーバックしか手に入らない。しかたなくペーパーバックを読んで、気付いたら何でも読みこなせるようになっちゃったんですよ」

 私を含め何十年も英語を勉強してもできない人がほとんどですが……やはり山川亜希子さんは持って生まれた語学の才能があったのでしょう。

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 「僕たちは訳しながら精神世界を勉強してきたって感じですよね。本当に多くの日本人がまだ知らないことだったので。でも、最初のうちは輪廻転生と言われても信じられなかったです」
 自分の力で運命を切り開いてきた山川紘矢さんは、はじめは見えない世界が信じられなかったようです。亜希子さんの方は、最初の段階からチャネリングしたり、精霊のサポートを受けていました。
「書いてる時も特に思ってなかった語彙が出てきたりとか。訳し方もひらめいたりしました。私の場合には映像が出てくるから、それを書き写してるみたいな。自分で書いてると思ってるんですが、後ろで助けてくれてる人がいるんですよね」

 それはかなり羨ましい状態です。誰にも背後で助けてくれている存在がいるのかもしれませんが、それを受信できない人がほとんどなのでしょう。
「楽に書ける時って自分で書いてるっていう感覚より、書かされている部分があります。明け渡しているからでしょうか」
 こういう表現でかっこいいと思われたい、とかエゴがあると、バックアップを受けられないのかもしれない、と感じました。自分を空っぽにして、良いエネルギーとつながるのが、良い執筆活動につながるのでしょう。また、自分がネガティブだとネガティブな精霊が寄ってきてしまうので、ポジティブな精神状態を保つのも重要です。

 もし、山川夫妻のようなすごい経歴だったら自己肯定感も高く、常にポジティブで自信を持てそうですが……。そんな素人的な感想を言うと、山川紘矢さんは、「精神世界が怪しいと思っている人も、経歴を見て、あれ、この人東大出てるじゃない、ちょっと読んでみようかな、と思ってくれます。前世療法のブライアン・L・ワイス博士も、イェール大学出身とアピールしていますよ」と、隠れたメリットを教えてくださいました。やはり山川夫妻は、天から選ばれた存在だと感じ入りました。
「でも、良い大学出てるからって偉いこともないし、社長さんだから、お金持ってるから偉いってこともないですからね」
 と清々しい笑顔で話す山川紘矢さん。世間の価値感や過去から解放され、自由で幸せ感にあふれていました。良い仕事が引き寄せられるのは精霊のバックアップだけでなく、夫妻のお人柄もありそうです。

辛酸なめ子漫画家・コラムニスト。1974年東京都生まれ、埼玉県育ち。精神世界、開運から皇室、アイドル観察、海外セレブまで幅広いテーマを対象にエッセイと挿絵で人気を得る。著書に『辛酸なめ子の現代社会学』(幻冬舎文庫)、『スピリチュアル系のトリセツ』(平凡社)、『大人のコミュニケーション術 渡る世間は罠だらけ』『新・人間関係のルール』(光文社新書)、『女子校礼讃』『辛酸なめ子の独断!流行大全』(中公新書ラクレ)ほか多数。

その他の回を読む:第1回  第2回  第3回  第4回  第5回  第6回  第7回  第8回  第10回  第11回  第12回  第13回  第14回  第15回

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