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【連載コラム 第13回】辛酸なめ子の英語寄り道、回り道

インドの天才占星術師の怒濤の英語力

 早口の英語で、将来の予測を滔々と語る少年。Youtubeの注目度も高く、数十万回再生されている動画も。精悍さと知性が感じられる彼の名は、アビギャ・アナンド君。数年前、インドの天才少年として話題になったのでご存知の方も多いでしょう。

 彼は2019年の8月に、新型コロナウイルスについて予言したことで有名になりました。「2019年11月にウイルスによるパンデミックが発生」「航空業界、自動車産業が打撃を受ける」などが、彼が占星術の知識によって導き出した予言の一部です。インド占星術(ジョーティッシュ)はよく当たることで有名です。2006年生まれのアナンド君はインド占星術やヴェーダ、アーユルヴェーダに造詣が深く、10歳で大学の天文学教室に入り、トップの成績で卒業したほどのポテンシャルの持ち主です。

 コロナを予言した頃はまだ13歳のあどけなさが残る少年でした。動画がヒットして、個人カウンセリングの仕事も受けるようになって、経済的にも潤っているのでしょうか。録音機材がアップグレードして、部屋が広くなったのか声も響くように。今は大人っぽさも漂わせながら、よりパワフルな英語で予言を炸裂しています。その怒濤のトークはなかなかヒアリングが難しいです。英語力に頭の良さや回転の速さが如実に現れています。インド人はなぜ語学に長けているのか……やはりカレーに入っているターメリックが脳を活性化させているのでしょうか。そういえば、コロナ禍直後の予言では、ウイルスに負けないために、有機野菜を食べたりウコンを摂取したりして、免疫力を上げることが大切と話していました。

 アナンド君の最新の予言が気になって、公式チャンネル「Conccience」をチェックしてみました。ここはアンドロイドのスマホの音声認識機能の力を借りて、アナン君の動画を再生しながら、自動文字起こし。その後、英語から日本語に少しずつ翻訳していきます。

 序盤のアナンド君のトークは,20秒でこれだけのボリュームがあります。
Historical cycles in today’s video. Trying to analyse what could happen for both India and the world in this timeframe. Being many things happening rapidly and I’d like to explain some very important aspects for this year. This video is not going to be a very comprehensive outlook of the entire year.

 調べたら、人は10秒で平均50文字ほど話せるそうで、20秒は100文字で、日本語と英語の語感の違いはありますが、アナンド君はなんと300文字も話していました。息継ぎもあまりしていないように見えますが、肺活量も半端ないです。  

 予言の本題に入って、気になる話題をピックアツプしてみます。
・2023年から2024年にかけては、東南アジアとインドに大きな危険が迫っている。 東南アジア諸国は政治的に変化する。
・多くのアナリストが主張しているけれど、2024年には世界大戦は起こらない。ただ、今後数年間で世界規模の紛争が発生する可能性が非常に高い。
・インドの首相をはじめとした政治家のトップは2024年を通して危険にさらされる。火星の時代になって、我が国(インド)は大きな転換期を迎える。2024年4月頃に大きな変化が起こる。インドは今後数年間でより紛争を起こしやすくなり、同時に強大化する可能性がある。
・2025年に、土星とラーフ(インド占星術に出てくる影の惑星)が接近した影響で、大量虐殺が起こるが、隠蔽される。
    1968年に、ベトナム戦争で米軍による大量虐殺がしばらく隠蔽された時と同じ星の配置。
・2025年に、南シナ海や世界の他の海域で数隻の船舶が攻撃される。
・2024年から2025年に、海底地震の可能性がある。
・2025年頃には、兵器の第3世代が登場。世界的な紛争で使用される可能性がある。
・全体としては2024年4月から2025年4月が非常に重要な年になる。

 24年2月時点では、こちらの予言が最新のようですが、暗い内容が多いです。確認した限りでは、日本については特に言及はないようでした。予言がないのは、良い兆しだと思いたいです。以前は無邪気さが漂っていたアナンド君が、影がある雰囲気になっているのは、不穏なトピックに注目しがちだからでしょうか。「チャンドラ(月)」「マハダシャー(運勢の傾向)」「ラーフ」などインド占星術用語も出てくるので、占星術が好きな人にとっては興味深い内容かもしれません。

columnphoto

 Youtubeを検索していたら、プリティカ・ラオさんというインドの女優の公式動画に、リモートでアナンド君が出演しているのを発見。こちらは2023年11月頃のわりと最近の動画でした。インドは多言語だからか、2人は英語で話しています。

「今回のインタビューにとても興奮しています。あなたがパンデミックを予言してからたくさんの動画をフォローしています」とほめそやす美女に、まんざらでもない様子のアナンド君。この動画でもまた早口で予言をしていました。

「火星と土星が180度の角度で向かい合うことで、イライラしやすい性格と攻撃的な性格が結びついて、対立が起こります」など、ちょっとわかりやすい解説も入っていました。

・今年、7月から8月にかけて大規模な洪水が起こる可能性がある
・今年中に大規模な火災が発生する。
・インド政府はタミル・ナードゥ州など南部でも警備を強化すべき。
など、予言の内容はインド向けでした。最後に、個人相談も受け付けている、という宣伝で動画はしめくくられました。インド占星術で未来のことがわかると、 裕福になって、人生で成功できるそうです。

 アナンド君のカウンセリングはわりとお高いので、無料の動画を拝見して、少しでも英語をヒアリングできるようになりたいです。動画の最後によく唱えられる「オームシャンティオーム……」というマントラはスッと心に入ってくるのですが……。

辛酸なめ子漫画家・コラムニスト。1974年東京都生まれ、埼玉県育ち。精神世界、開運から皇室、アイドル観察、海外セレブまで幅広いテーマを対象にエッセイと挿絵で人気を得る。著書に『辛酸なめ子の現代社会学』(幻冬舎文庫)、『スピリチュアル系のトリセツ』(平凡社)、『大人のコミュニケーション術 渡る世間は罠だらけ』『新・人間関係のルール』(光文社新書)、『女子校礼讃』『辛酸なめ子の独断!流行大全』(中公新書ラクレ)ほか多数。

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