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【連載コラム 第18回】辛酸なめ子の英語寄り道、回り道

アスパラガスは知ってる? 米大統領選の行方

 このところ、アメリカの大統領選挙は後世に残るドラマティックな展開を見せています。ドナルド・トランプ暗殺未遂事件の衝撃がさめやらぬ間に、バイデン大統領が撤退を表明。副大統領のカマラ・ハリスが立候補を表明すると、短期間に支持を集め、カマラ旋風が巻き起こって「確トラ」が揺らぎはじめています。

 個人的には、やはり九死に一生を得たドナルド・トランプの、危機的な状況でも闘志を見せる姿に感動を覚え、神によって生かされているトランプは信者の言うようにもしかしたら「光の戦士」なのかもしれない、と思えました。しかし対中半導体規制についてトランプが言及すると、その影響で半導体株が急落。買ったばかりの半導体株が2割減で、このままトランプになったらますます日本や世界のテック系の株に影響がありそうだし、円安も進むかもしれない、と危惧を抱いています。

 どうなるのか予測がつかない大統領選。ここは世界的な占い師の意見を聞いてみたいです。先日、イギリスの著名な「アスパラガス占い師」、ジェミマ・パッキントン氏が大統領選の結果を占った、というニュースを目にしました。「アスパラガス占い」とは、アスパラガスを複数本手で掴んで投げ、落ちた形から文字やメッセージを読み取る、というもの。古来から、石を投げる占いなどがあるので、アスパラガスを用いるというのは独創的ですが、占いとしては伝統的な手法です。

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 ジェミマ・パッキントン氏は、自称75~90%の的中率を誇っているとのこと。少女時代から霊感があり、茶葉占いなどをして研鑽を積みました。「アスパラガス占い」では、過去には「ボリス・ジョンソン氏が将来首相になる」「EUからイギリスが離脱」「英国ロイヤルファミリーに悲しみが訪れる(エリザベス女王の逝去)」「異常な気温が当たり前になる」「映画『アリー/ スター誕生』のアカデミー賞受賞」などが的中していますが、外れたものも結構ありました。また、毎年のように「アスパラガスの出荷が高止まりする 」「アスパラガスは世界で珍重される野菜になる」など、アスパラガスについても占っているのが目につきます。ジェミマ・パッキントン氏は「私はアスパラガスが教えてくれることだけを信じている」と語っていて、アスパラガス愛があふれています。

 ジェミマ・パッキントン氏が出ている動画をチェックしてみました。番組のゲストとして出演している彼女は司会者とやりとりしながら、アスパラガス占いについて説明。イギリス英語なので若干ヒアリングしやすいです。

「I have some asparagus here. So, I would take the asparagus.」と、アスパラガスの束をひとつかみします。アスパラを投げてできたパターンから読み取るそうです。その後、ジェミマ・パッキントン氏は、アスパラガスにアメリカの大統領選について尋ねられると、投げて実演してみせました。彼女が以前同じテーマで占った時と変わらない文字が出たようです。それは「M」という文字
「I keep on seeing the letter M for Michelle,」
「私はこれを何度も目にします。ミシェルの Mです」と、ジェミマ・パッキントン氏は断言しました。「 I don’t get K.」とのことで。カマラ・ハリスのKも、トランプのTも出ないそうです。もちろんジョー・バイデンのJの字もありません。 「アメリカでは何が起きてもおかしくありません。ミシェル・オバマが変革を起こすと私は予想します」と、ジェミマ・パッキントン氏。ただ、少し波乱がある、というメッセージも出ているそうです。

 世論調査によると米国民はミシェル・オバマについて好意的な評価をしていて、彼女が出れば勝てる、と言われています。本人は出馬を否定していて、ハリス副大統領への支持を表明。イニシャル「M」のミシェル・オバマが応援しているカマラ・ハリスなら行けそうな気もしますが……。

 もしかしたら「M」は「Man」、男性の「M」かもしれないとも思えてきました。イギリスのアスバラガスにとっては遠いアメリカの選挙なんて正直どうでもいいこと。名前なんてよく知らないし……ということで適当に、どちらかというと男性の方、と答えたのかもしれません。

 アスパラガス占いをまねて、私もスティック状のポテトのスナックを投げて占ってみました。するとカタカナの「ト」とも「ハ」とも読める文字が浮かび上がり、結局どちらかわからなくなりました。そのくらい、互角の勝負ということなのかもしれません。今の時点ではトランプ氏、ハリス氏、どちらになってもおかしくない気がします。ポテトはそのあと集めて食べさせていただきました。

 ジェミマ・パッキントン氏が占いに使っているアスパラガスは、イヴシャム渓谷で栽培された最高級のものだそうです。その地方では「ナショナル・アスパラガス・デー」というイベントがあるほど、アスパラガスが珍重されています。長年、人々に大切にされてきたアスパラガスが特別な力を宿すのは不思議ではないように思えます。占いが多少外れても、アスパラガスのおいしさ、そして栄養価は不変です。これからもジェミマ・パッキントン氏はアスパラガスとの絆を深めていくことでしょう。

辛酸なめ子漫画家・コラムニスト。1974年東京都生まれ、埼玉県育ち。精神世界、開運から皇室、アイドル観察、海外セレブまで幅広いテーマを対象にエッセイと挿絵で人気を得る。著書に『辛酸なめ子の現代社会学』(幻冬舎文庫)、『スピリチュアル系のトリセツ』(平凡社)、『大人のコミュニケーション術 渡る世間は罠だらけ』『新・人間関係のルール』(光文社新書)、『女子校礼讃』『辛酸なめ子の独断!流行大全』(中公新書ラクレ)ほか多数。


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