【連載コラム 第39回】辛酸なめ子の英語寄り道、回り道
旅行先も観光客も格上げされる最強のガイドブック

世界中の都市のトラベル情報を収めたルイ・ヴィトンの「シティ・ガイド」は、センスと品格が漂うワンランク上のガイドブックです。このたび、パリ、ロンドン、ニューヨーク、北京、リスボン、モスクワ、サンフランシスコ、ソウル、シンガポール、そして東京の10都市がアップデートされたとのこと。先日、銀座の LE CAFÉ Vでの「ルイ・ヴィトン シティ・ガイド 東京 2026 刊行記念発表会」に伺いました。現物を拝見すると、ルイ・ヴィトンの上品な紙袋の色、サフランカラーと同じ箱にガイドブックが収められています。このガイドブックの英語版の価格は4400円。ルイ・ヴィトンでこの価格で買えるものがあるとは感慨深いです。昨今は本の値段も上がっていて2000円台後半も珍しくないので、4400円なら決して高くありません。

東京のシティガイドは英語版のみ(大阪は日本語版がありました)。帰宅して少しずつ訳しながら読んでみました。このガイドブックは文字がメインで2色刷りなのですが、東京版は鮮やかなピンク色がかわいいです。六本木の高速道路とビル、浅草寺、渋谷のスクランブル交差点、東京タワーが入った遠景、という東京を象徴する写真から始まり、おしゃれなビジュアルを見ると都民でも新鮮な気持ちになります。
「LOUIS VUITTON AND TRAVEL」という前書きには、ルイ・ヴィトンとラゲージの歴史などが綴られていました。ルイ・ヴィトンのトランクや旅行鞄は永遠の憧れです。過去には、ジャングルの蒸し暑さに対応するベッド付きトランクや、指揮者のために貴重な楽譜を収納するトランクなど、特別な人のための贅沢なラゲージが開発されたそうです。
この「シティ・ガイド」シリーズは、才能あふれるジャーナリストや作家陣によって執筆されていて、個性的なスポットからラグジュアリーな施設、定番の名店まで網羅されています。ざっと目次を拝見すると、歴史的建造物、星付きホテルから隠れ家的な宿、カフェとカウンターカルチャー、グルメスポット、バーとワインセラー、クラブとパーティースポット、コンサートホールとアリーナ、インテリアショップ、ギャラリー、美術館、博物館、庭園、書店、劇場と映画館、ファッション、スポーツ、観戦スポット、といったジャンルが並んでいてかなり充実しています。
東京の歴史についてのページもあり「かつて江戸は、戦国時代の大名、太田道灌によって15世紀半ばに創建された、小さな海辺の漁村でした。それがいつの日か、高層ビルが立ち並ぶ近代日本の巨大な首都になるとは、誰も想像できなかったでしょう」と、意外と都民も知らない由来が書かれていました。
ホテルのページを開いてみると「アマン東京」「ブルガリホテル東京」「マンダリンオリエンタル東京」「ザ・ペニンシュラ東京」「シャングリ・ラ東京」「フォーシーズンズホテル東京大手町」「帝国ホテル」「ホテルニューオータニ東京」「星のや東京」「グランドハイアット東京」「ジャヌ東京」といった高級ホテルが並んでいました。説明やキャッチフレーズにも「LUXURIOUS」(豪華な)「luxury」(贅沢)が頻出。例えば「フォーシーズンズホテル東京大手町」(宿泊料14万円〜)の説明文はこんな感じです。
「This classy iteration of the Four Seasons hotels puts the emphasis on subtle, Japanese-inspired design by Belgian designer Jean-Michel Gathy and his agency, Denniston. For all the modern and minimalist chic of the rooms and suites, with their soothing neutral hues,」
「ベルギー人デザイナー、ジャン=ミシェル・ガティ氏と彼のデザイン事務所デニストンによる、洗練された日本風のデザインが、フォーシーズンズホテルの新たな魅力を際立たせています。客室とスイートは、落ち着いたニュートラルカラーで統一されたモダンでミニマルなシックなデザインです」
デザイナーや建築家の名前もきっとわかる人にはわかるのでしょう。富裕層の友達がいたら「ブルガリホテルは、建築家ピカード・チルトンが手がけたんですって」とか固有名詞を出してみたいです。
「星のや東京」(宿泊料18万円〜)の説明文は……
「They are then welcomed into this timeless hotel-ryokan, agreeably delicate and refined, invited to relax and to take time for themselves, in a world of a thousand delicate details, each one a thoughtful gesture.」
「時を超えたこの宿は、繊細かつ洗練された空間で、ゆったりとくつろぎ、自分だけの時間を過ごせるように誘います。無数の繊細なディテールが散りばめられた世界、一つひとつが心遣いの表れです」
詩的な文章で、写真が掲載されていなくても、快適な空間がイメージできます。ホテルのページを眺めていると涙で目がにじんできました。生きているうちにこのステージに到達したいです……。
レストランのページも「割烹 室井」「六雁」「精進料理 醍醐」「L’OSIER ロオジエ」「エスキス」「スガラボ」「くろぎ」「レフェルヴェソンス」などセンスを感じさせる高級店が並んでいました。
気軽に入れそうなカフェのページを見つけてホッとしました。「ブルーボトルコーヒー」「茶茶の間」「フグレントウキョウ」「銀座千疋屋」「ヒガシヤギンザ」「ロータス」「ニコライバーグマン」「ルサロンドニナス」「猿田彦珈琲」など、星の数ほどあるカフェから絶妙なセレクション。ファッションやギャラリーのページも、これは本当に趣味が良い人が行くスポット、というところだらけでした。今回は東京版を見て、センスの良さを確認できたので、海外旅行に行くときはその国のルイ・ヴィトンの「シティ・ガイド」を買って行ったら間違いないと思いました。全編英語ですが……。
ちなみに私が通常の旅行で優先しがちなのはパワースポットですが、この本にはもちろんそんなジャンルのページはなく、神社仏閣や公園については「ARCHITECTURE AND GARDENS」の中に少し紹介されているくらいでした。たぶん、この「シティ・ガイド」を買う人は、もはやパワースポットを探し求める必要はなくて、自分自身がパワーを発する存在なのでしょう。


